スポーツフィールド管理 グラウンド維持管理 整備の目的 グラウンドでは、平坦で弾力性のあることが必要です。そのためには、路面の硬度・湿度が適当で、乾き過ぎや水溜りができなく、小砂利や凹凸がないことが要求されます。グラウンド表面は絶えず風雨にさらされ、あるいは地球の自然現象によって何らかの変化が起きています。これを常に観察し、本来の精度を維持確保することがグラウンドの整備です。 整備不良のグラウンドは、スパイクによって踏み固められたり、掘り起こされたりして硬度が変化するとともに、グラウンド外部から土砂や異物が入りこんで危険性が増大することになります。安全性の確保と良好なコンディション維持のためには、日常の維持管理作業を欠かすことが出来ません。 整備の内容 日常行われる整備は、清掃・女装・散水・転圧などの簡単な作業と、かき起こし・穴埋め・地均しなど軽度の補修である。 季節的な作業には、夏季乾燥時の水分補給と、冬季の霜害防止および凍上した場合の春季補修と、梅雨期の降雨および台風後の臨時補修が必要となる。その他、長期的には使用頻度により損傷が累積すること、短期的には競技会・運動会などの急激な損傷を補修する必要があります。 整備用器具 a.散水用具 ホース(アダプター付きノズル)、大型散水機(レインガン)、スプリンクラー b.聖地用具 レーキまたは釘付き板、均し板(トンボ)、ブラシ、耕運機(トラクター)、グレイダー c.転圧用具 手引きローラー(0.3〜0.5t)、エンジンローラー(0.4〜1.0t) d.補助用具 ライン引き器、スコップ、ショベル、バケツ、竹ぼうき、草刈鎌、農耕用くわ、リヤカー、その他 最近では省力化のための動力付機械類が数多く開発されているので、日常の整備作業の範囲を超える補修作業や、グラウンドが広い場合は、複合整備機械の利用を考える必要があります。 クレイグラウンド(野球場)の維持管理 通常の整備 使用されたグラウンドは、表面に損傷をきたし、使用のはげしい箇所ほど破壊が大きくなります。 一試合または半日ごとに軽い整備を行い、損傷を押さえます。特に試合中に降雨があった場合は、グラウンドの痛みも大きく、適切な処置を要します。 散水 散水の目的は、乾燥により硬化した表面を最適含水比の状態にしてコンディションを整えることと、強風やスライディングなどによる粉塵飛散を防止することです。 散水回数は、地域、季節、舗装材の種類により若干の差がありますが、4月から10月の間は、週3回程度必要です。広いグラウンドの場合は、レインガン(またはスプリンクラー)による散水を主とし、ノズル付きホースによる人力散水は、まきムラになりやすいため補助的手段とする方が良いでしょう。また、乾燥期には短時間に大量の散水を必要とすることがあるので、移動式大型散水機(台車付レインガン)を用意しておくと便利です。 整地 整地の目的は、軽微な不陸修正と、整地しながら表面の状態を点検することですので、できる限り頻繁に作業をすることが望ましいです。 特にグラウンド使用後は表面が痛んでいるため必ず行うようにした方が良いでしょう。 不陸や損傷が見られない場合は、均し板(トンボ)またはブラシにより、表面の砂を均等に分散させるだけで良いですが、軽い不陸がある場合は散水により湿度を帯びた表面をレーキまたは釘付き板で軽く傷を付け、均し板で平坦にします。穴があいている場合は、表層材と同質の補充材により、周囲の土と良くなじむように埋め戻し、均し板をかけます。 転圧 転圧の目的は、表面がスパイクなどで、かき起こしされたり、降雨などによって硬度が不足した表層を、締め固めによってコンディションを回復することです。また、圧縮することにより水中の水分が表面に押し出されるため、乾燥を促進する効果もあります。 表面がバサついて粘着力がなくなった場合は、転圧前に苦汁(1㎡あたり0.3〜0.5kg)を水溶液として散布します。 含水比の高い時に重いローラーをかけると、表面土がズレて、ヒビ割れや表面剥離(肌わかれ)の原因とするため、表面が乾くのを待って化粧砂を散布し、転圧します。 使用するローラーはなるべく軽いものが良く、0.3〜1.0tローラーで縦横それぞれ2〜3個程度の転圧を行います。 なお、通常の転圧は、グラウンド使用後および風雨により表面が荒れた場合に行いますが、使用しない時期であっても月2回程度は締め固めておく必要があります。 表面処理 表面処理は、化粧砂と苦汁を散布することです。化粧砂は、表面に適当な滑りを与え、フットワークを楽にする効果があります。しかし、まきすぎると乾燥しやすくなり、表土の粘結性を悪くします。苦汁は、空中の水分を吸収し、潮解して表土の湿度を保ち、乾燥を防止するとともに土の粘着性を良くするので定期的に散布する必要があります。 散布する苦汁は状況に応じて1㎡当たり0.3〜0.5kg程度とします。 凍上防止 凍上は、土の含水比が高く土の密度が小さい場合に起こります。 粘性土およびアンツーカは、気温が-3℃以下にナルト凍結しますが、凍結防止剤として塩化カルシウムを散布すると、凍結温度を-5〜6℃まで低下させることができます。散布回数は、冬の全期間にわたって1ヶ月に2〜3回、散布量は1㎡当たり0.3〜0.5kg程度とします。 春先の補修 季節的な補修として行われる代表的な作業は、春先の補修です。冬期に凍結、崩壊を繰り返した土は、土壌構造が破壊されて土粒子の密度が小さくなり、粘着性が失われます。その結果、表土の粘結度や硬度が低下し、平坦性や平滑性が失われます。補修に際しては、既設の表層土をかき起こし、表層材と同質の土を補充して整地および転圧を行います。 a.掘り起こし 崩壊した表土を耕運機または釘付き板で掘り起こし、砕土を行います。深さは現場の厚さに合わせて決定します。(中層に損傷を与えないようにする必要があります) b.敷均し、混合 測量杭により所定の高さ、勾配を決め、季節の表層材と同質の補充材を、小車にて小運搬し人力にて敷均します。季節の表層土になじませるよう耕運機にて混合切り返しを充分に行います。 c.転圧、不陸修正 転圧は、ローラー(0.5〜1.0t)で行い、縦横交互に幅をダブらせて数回行います。不陸整正は人力にて充分に行い、平坦性を高めます。 d.表面処理 苦汁および化粧砂を散布し、仕上転圧、ブラシ掛けを行います。 改修整備 長くグラウンドを使用していくうちに、表層土が風化したり、ローラー、スパイクなどにより細粒化され、中層、下層および地下排水暗渠などに流入し、排水効果を減じるなど、軽整備では良いコンディションが得られなくなります。その場合は、表土の入れ替え、補充などの改修工事が必要となります。